
公募研究について(第2期)
令和8年度の科研費・学術変革領域研究(A)の公募要領が文部科学省HPにて公開されています。本年度の公募は9月17日が締め切りとなっています(各所属機関内での〆切は異なりますのでご注意下さい)。
令和8(2026)年度科学研究費助成事業 公募要領・研究計画調書のダウンロードサイト
以下に「メゾヒエラルキーの物質科学」領域の概要と公募内容について,「公募要領」PDF 31ページに掲載されている内容を転載しています。
1.領域の概要
従来の結晶性材料、液晶材料、あるいはポリマーなどのバルク材料は、合成された分子や無機材料が自己集合・自己組織化することで形成されるものの、その構造はナノスケールで形成された周期構造や集合構造が単純にマクロスケールまで拡張されたものであり、ナノとマクロをつなぐメゾスコピック領域においては、ほぼ階層性が見られない。これは、分子から細胞へと精緻に階層化された構造と機能を持つ生体組織とは対照的である。本研究領域では、この未開拓のメゾスケール領域での自己集合・自己組織化により構築される階層構造に新たな機能を見出し、革新的な物質科学の展開を目指す。そのためには、これまで精力的に研究されてきたナノ構造構築技術に加え、それらをさらに上位の階層構造へと拡張・組織化するための新しい学理の構築が不可欠である。例えば、自己集合過程における核形成や二次的に誘発される核形成(二次核形成)といった非線形的な構造成長過程を制御することで、これまでにない機能性メゾ構造体の創出が期待できる。
そこで本研究領域では、メゾスケールにおける階層的自己組織化構造をもつ材料を「メゾヒエラルキー物質」と定義し、1)メゾスケールでの超分子自己集合化学、2)メゾヒエラルキー構造の設計・構築技術及び理論的設計手法、3)可視化・解析技術によるメゾヒエラルキー構造の観測と定量化、4)光と物質の相互作用を活用したナノ構造間のエネルギー操作技術、5)メゾヒエラルキー構造体が示す新奇な力学的特性の評価等の研究トピックを中核に据えた学際的研究を推進する。これらの研究トピックに携わる多様な専門性をもった研究者が協働することで、メゾスケール階層構造に関する知見を蓄積し、それらを統合的に理解する「メゾヒエラルキーの物質科学」という新たな学術領域を確立し、材料創成における学術変革を起こす。A01 では「造形」と「可視化」、A02 では「光機能科学」と「光計測」、A03 では「刺激応答材料」と「非線形応答」、B01では「理論計算」という 4つの研究項目 (A01–A03,B01)・7つのグループを柱に研究を進める。加えて、公募研究ではこれらの基幹課題を補完する研究提案、あるいは既存の枠組みにとらわれない斬新な発想に基づく研究を広く募る。
2.公募する内容、公募研究への期待等
C01 メゾヒエラルキー構造の合成・構造解析 【単年度あたり応募上限額:350万円,採択目安件数:12件】
有機分子、無機材料、あるいはそれらのハイブリッドの自己組織化を階層的に制御し、メゾスコピック領域における構造制御を実現する挑戦的な研究提案を歓迎する。有機分子の種類はメゾスケールでの励起子移動が期待できるπ電子系分子や機能性色素が望ましい。さらに生体機能分子等を、また無機材料については金属ナノクラスターや量子ドット等を想定している。特に二次核形成を活用した階層構造構築に挑戦する研究者の参画を期待する。形成されるメゾヒエラルキー構造の形態は問わないが、巨視的スケールへと発散しないことが望ましい。ならびに、これらの形成過程で生じる階層構造を独自の手法で分析、観察する研究提案も歓迎する。➡︎ 研究項目A01に対応
C02 メゾヒエラルキー構造の光物性/力学物性の解析・利用 【単年度あたり応募上限額:300万円,採択目安件数:6件】
メゾヒエラルキー物質は、メゾスコピック領域で階層性を持たない材料では達成できない諸物性を示すことが予想される。本研究項目では特に光物性・力学物性の観点から、メゾヒエラルキー物質ならではの光物性・力学物性を解き明かす提案、さらにはそれらの諸物性を活用する研究提案を募集する。例えば、長距離励起子移動やそれらの制御、エネルギーの増幅が可能な光機能性メゾヒエラルキー構造の物性計測に関する独創的な研究提案を歓迎する。➡︎ 研究項目A02に対応 また、メゾヒエラルキー構造特有の力学特性を解析・可視化する新規手法や、共振器強結合によるエネルギー準位の操作技術を提案する基礎的研究、またはそれらを最大限に生かした、例えばメゾヒエラルキーメカノ機能性材料や、超長距離励起子移動を利用した新奇デバイスの開発を歓迎する。➡︎ 研究項目A03に対応
C03 メゾヒエラルキーの理論解析 【単年度あたり応募上限額:200万円,採択目安件数:5件】
当該領域の本質は、系のサイズが原子レベルから巨視的レベルへ増大するにつれて生じる創発現象を生み出す理論原理を発見することにある。本公募研究においては、メゾヒエラルキー構造の形成メカニズム・安定性、光・力学的物性・機能を解析するための理論構築及びその応用計算の研究提案を募集する。量子化学(第一原理)計算、(粗視化)分子動力学などの分子論的モデルに留まらず、物性理論、ソフトマター物理、弾性体力学理論を専門とする研究者も歓迎する。また、核形成や二次核形成を理論解析できる研究者の参画を期待する。➡︎ 研究項目B01に対応